こんにちは、「炎のタックラー マイク75」です!!
梅雨ということもあり、お天気が悪い日が続きますが、いかがお過ごしでしょうか?
体調管理には十分お気をつけ下さいませ。
さて、本日は投稿が遅くなってしまいましたが、今さらながらの話題作『鬼滅の刃』が
ヒットした理由を自分なりに考察してみようと思います。
「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」は、昨年2020年10月16日の公開以来ロングランを
続け、国内の興行収入は400億円を突破、海外をふくむ総興行収入は約517億円(5月
21日時点)を記録している大ヒット作となっています。
(※現在も興行収入は更新中!!)
映画公開後わずか10日後には興行収入が100億円を突破。
これまで宮崎駿監督の『千と千尋の神隠し』が持つ25日という興行収入100億円最速
突破記録を19年振りに更新しました。
その後も勢いが衰えず、公開から45日後の11月30日には興行収入が275億円を超え、
歴代2位の『タイタニック』を抜き去って、第1位の「千と千尋の神隠し」308億円をも
余裕で超えました。
また6月16日に発売されたブルーレイ・DVDの累積売上枚数は100万枚を突破・・・
といった具合にすべてが破格の数字を叩き出しています。
今や日本国内で知らない人の方が少なくなったと思えるほどの大ヒット作品と
なった「鬼滅の刃」。
2016年から週刊少年ジャンプで連載が始まり、2019年アニメ化を契機に大ブレイク。
緑と黒の市松模様を見れば、多くの人が「鬼滅の刃」を連想するようにもなりました。
超有名作の仲間入りを果たした大きなポイントが劇場版の大ヒット。
国内トップの興行収入を叩き出すまでの経過などを振り返ります。
本作は従来の映画評論家だけでなく、いろいろなマーケター、果ては経済評論家に至る
まで経済効果などについての分析を行っています。
『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』は、なぜここまで爆発的なヒットを記録したのか?
マーケティング戦略における「イノベーター理論」の視点から少しだけ優しく分析して
みようと思います。
【新製品の爆発的なヒットの鍵を握る「イノベーター理論」とは?】
イノベーター理論とは、アメリカのスタンフォード大学で教鞭をとったエベレット・M・
ロジャース教授が提唱した新製品の普及の過程を体系的に整理した理論です。
ロジャース教授によれば、
新製品が市場に投入されるとまずは「イノベーター(革新者)」と呼ばれる最先端技術
など新しいものに非常に高い関心を示す層が消費を始めます。
消費者のおよそ2.5%がこの「イノベーター」層に該当します。
続いて消費を始めるのが「アーリーアダプター(初期採用者)」と呼ばれる層です。
「アーリーアダプター」は消費者の13.5%を占め、「イノベーター」ほどでは
ありませんが、新しい商品に対する情報感度の高い消費者層です。
実際の消費の場面ではテレビなどのメディアやSNSなどを活用した“オピニオン
リーダー”や“インフルエンサー”として、消費の拡大に多大な貢献を果たす消費者層
ともいえるでしょう。
それから商品が徐々に流行してくると消費を始める消費者層が「アーリーマジョリティ
(前期追随者)」と呼ばれるグループになります。
特徴としては、これまでになかった新たな商品に対しては購入に比較的慎重な態度を
示しますが、「流行に乗り遅れたくない」という気持ちから平均よりも早く消費を
始めます。
この「アーリーマジョリティ」は消費者全体の34%を占めるため、このグループに
まで新製品が浸透してくると爆発的なヒットの兆しが見られるようになります。
次に消費を始めるのが「レイトマジョリティ(後期追随者)」と呼ばれる層です。
この「レイトマジョリティ」の特徴は、新製品に対して懐疑的であり、時間をかけて
新製品の評判などを慎重に吟味し、大多数の高評価を確認した上で自分に必要とあらば
ようやく購入に踏み切ります。
「レイトマジョリティ」は消費者層の34%を占めますが、大多数の消費者につられて
消費を始めるために「フォロワーズ」とも呼ばれています。
そして最も遅く消費を始めるのが「ラガード(遅滞者)」と呼ばれる層です。
この「ラガード」は最も保守的な消費者層であり、新製品が伝統的、文化的になる
まで購入に至らないとされています。
中には最後まで新製品を受け入れない頑固な消費者も存在します。
この「ラガード」は消費者全体の16%を占めています。
画期的な新製品を爆発的なヒットに導くためには、これら5つの特徴ある消費者層に
対して順番に効果的なアプローチを行わなければならないということになります。
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少々前置きが長くなってしまいましたが、ここからが本題です。
このイノベーター理論の視点から『劇場版「鬼滅の刃」無間列車編』の爆発的なヒットの
からくりを読み解いてみます。
さて、それでは『劇場版「鬼滅の刃」無間列車編』はどのようなマーケティング戦略を
駆使して、わずかな期間で日本歴代1位に迫る爆発的なヒットを記録したのでしょうか?
その変遷を辿っていきましょう。
『鬼滅の刃』は2016年2月に週刊少年ジャンプで連載をスタートさせます。
コミックスの第1巻は2016年6月に発売されましたが、2018年6月までコミックス計11巻の
累計発行部数は250万部程度でした。
大正時代の人喰い鬼が巣食う世界で、主人公の炭売りの少年・竈門 炭治郎が、人喰い
鬼に家族を惨殺され、唯一生き残ったが、鬼にされてしまった妹の禰豆子(ねずこ)を
人間に戻すため、鬼を討つ旅に出るストーリーは、「イノベーター」や「アーリーアダ
プター」の心は捉えていたものの、爆発的なヒットの鍵を握る「アーリーマジョリティ」
にはまだまだ届いていなかったのです。
そこで「アーリーマジョリティ」にアプローチするために取った方法がアニメ化でした。
2019年4月からアニメの放送が開始。
実際に見てみると分かりますが、『鬼滅の刃』は、戦闘シーンなどアニメ化されることに
よりその魅力が飛躍的に高まります。
しかもアニメ制作に携わったのは美しい映像制作に定評がある『ufotable』。
ufotableが織り成すアニメの世界観にマッチする幻想的な映像で、視聴者は『鬼滅の刃』の
アニメを見始めるとその世界観に一瞬で惹き込まれます。
このアニメは2019年9月まで全26話が放送されましたが、この放送終了時にはコミックス
累計発行部数は1200万部に到達。
この段階で着実に「アーリーマジョリティ」が消費の輪に加わったといえるでしょう。
さらに『鬼滅の刃』ブームを加速させるために一役買ったのが、Netflixなどの定額の
動画配信サービスです。
通常テレビ放送のアニメは見逃してしまえば再放送まで見ることができません。
一方、定額動画配信サービスでは、自分の都合のいい時間にアニメを視聴することが
できます。
新型コロナウイルス感染症の拡大で定額動画配信サービスの契約が急速に伸びる中、
「追加料金がかからなければ世間で噂になっているアニメを見てみよう」と興味を
持つ人が増え、そのまま「鬼滅の刃」の虜になった人達も多いことでしょう。
消費者を購入に走らせるためには、気持ちが高まったタイミングで商品を提供する
必要があります。
アニメが評判になっているものの、すぐに見ることができなければ、購入に対する
熱もいずれ冷めてしまいます。
そこで定額動画配信サービスがその熱の橋渡しを行い、『鬼滅の刃』熱が冷めない
間にコミックスなどの購入行動につなげていくことができたといえるでしょう。
結果として、この『鬼滅の刃』のアニメ化以降、コミックスの売り上げはうなぎ
のぼりとなり、2020年10月には遂に累計1億部の発行部数を超えることになるのです。
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「アーリーマジョリティ」から「レイトマジョリティ」へと熱が伝わった最大の
要因とは?
今回の『劇場版「鬼滅の刃」無間列車編』の記録的なヒットは、「レイトマジョ
リティ」へのアプローチにも成功した結果といえるでしょう。
その一番の要因は多大なるメディアへの露出です。
『劇場版「鬼滅の刃」無間列車編』は、わずか10日間で異例の興行収入100億円を
突破すると、テレビを始め、インターネット、新聞、雑誌、SNSなどありとあらゆる
メディアでその偉業が取り上げられ、恐らくほぼ全員の消費者が何らかの形で
『鬼滅の刃』の情報に触れることになります。
加えて数多くの芸能人や著名人が『鬼滅の刃』のコスプレを行いSNSで拡散して
いくことも『鬼滅の刃』に対する興味を飛躍的に高めることに一役買っていると
いっても決して過言ではないでしょう。
この『鬼滅の刃』の偉業は、これまでのアニメ化やコミックスの売り上げなどの
ベースに加え、新型コロナウイルス感染症の拡大で大型作品の上映がなく、空前
絶後の上映スクリーン数を実現できたこと、コロナの影響で外出する機会も少なく
なり自粛が緩和されたタイミングで上映できたこと、またテレビアニメの終了
(テレビアニメの最終話は劇場版への期待を持たせる形で終了しています)や
週刊少年ジャンプの連載終了で多くの“鬼滅の刃ロス”を感じるファンを取り込めた
ことなど、さまざまな特殊要因も重なって達成できたことだと思います。
ただ、多くのメディアに露出することによって噂が噂を呼び、『鬼滅の刃』熱は
「アーリーマジョリティ」から「レイトマジョリティ」に確実に伝わってさらに
熱を帯びてきたといえるでしょう。
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『劇場版「鬼滅の刃」無間列車編』が歴代1位を獲得し、記録をさらに伸ばす鍵と
なったのは、『鬼滅の刃』の特徴として、戦闘シーンは子どもたちが遊びで真似を
して夢中になる要素もありますし、主人公の炭治郎の家族愛や敵の鬼が人喰い鬼に
なるまでの悲しいストーリーなど20代以上の男女の共感を得る要素もあります。
また、大正時代の世界観はいわば時代劇ともいえ、高齢者がお孫さんとの会話の
きっかけとして見やすい環境も整っています。
このように幅広い層にアプローチできる作品だからこそ、ここまでのヒットを
記録したということもできます。
興行収入歴代1位を達成した今、どこまで記録を伸ばすかは「イノベーター」や
「アーリーアダプター」などのコアなファンのリピート回数を増やし、「アーリー
マジョリティ」や「レイトマジョリティ」に的確にアプローチして映画館に足を
運んでもらうかにかかっています。
もし、『鬼滅の刃』が今後ロングセラーを記録し、日本の伝統的、文化的な作品と
認められれば、遂には「ラガード」をも動かして、とてつもない記録を打ち立てる
ことができるといえるのではないでしょうか。
他にも様々なマーケティング理論を駆使してヒットの要因を解説している記事が
あります。
是非ともマーケティングを楽しんで学んでいただければと思います。