それは、秋雨煙る午後のことでした。
神保町のとある通りを3人の男が腹を空かせて歩いておりました。
30代の男2人は相合傘をしながら、20代の男は小さなビニール傘を片手に2人の後ろを歩いておりました。
30代の男2人は何やらコソコソと話をしながら、また20代の男は一人傘にあたる雨音に耳をすましながら歩いておりました。
川を渡り、いくつか信号を過ぎたところに「斑鳩」という名のらーめん屋がありました。
いつもは行列ができている人気店ですが、今日は何故か空いているようでした。
腹を空かせた男3人は、怪しい笑顔を浮かべ、ここぞとばかりに店に入りました。
店の中には食券機が設置されており、男3人はそれぞれらーめんを頼みました。
30代の男と20代の男は特製らーめんを、残りの男は普通のらーめんを頼みました。
やがて運ばれてきたらーめんを見て、男3人は「うむ」とうなづいてから食べ始めました。
男たちは無言です。誰一人話す者はいません。店内にはらーめんをすする音だけが響いておりました。
濃厚なスープ、やわらかめの麺、トロトロのチャーシューと煮卵。
味わう程にハマる深い味。言葉は無く、ただ夢の中へ堕ちていくように・・・
やがて、こってりとしたらーめんは男3人の空腹を満たし、
憂鬱な秋雨の午後に、男たちの笑顔を還すのでした。
続く... written by ムラタ大帝国